学歴が評価された、唯一の時
僕の若気の至りの話です。
二十代の時、車を運転中に問題を起こし、裁判となりました。実質、人を傷つけてはいません。
横浜地方裁判所で裁判となりました。僕は国選弁護人を依頼していました。相手は、横浜地方検察庁の名物鬼検事です。いわずとしれた東大法卒でした。
端折りますが、僕は判決で、
「運転免許取り消し・執行猶予四年」
の刑を言い渡されました。
この事故、国選弁護人の話に拠ると、相場は、
「運転免許取り消し・執行猶予三年」
であるそうです。
鬼検事が法廷で陳述しました。彼は鬼の形相で僕の目を睨んできました。
「本件の場合、運転免許取り消しの上執行猶予三年に処するべきところ、」
「被告人は、旧帝大卒であり、日本の将来を託されるべき立場であることも勘案すると、」
「今回は、被告に対し特段の反省を期待し、」
「運転免許取り消しの上執行猶予四年を求刑いたします」
この検事の取り調べはきつく、例えて見れば、ヤクザの脅しよりも怖いと感じました。ヤクザも、逆らえば、仕返しをしてくるでしょうけれども、何しろ、検事は国家権力を背負っていますから。
ビートたけしがかつて講談社襲撃事件の時、同じような感想をテレビでしゃべっていましたね。
「検察官がヤクザより怖かったッ」
今朝、TVニュースで、ある検察官の言葉が悪い、威圧的だったと報道していました。しかし、検察官が優しい言葉でしゃべったのでは、仕事にならない面もあると僕は正直思います。
僕がお世話になった検察官ですが、数年前、新聞の小さな記事で、その退官が報じられていました。
若かったあの頃、この検事に対しては、「コンチクショウ」という感情もありましたが、今になって思えば、あの求刑は、彼の僕に対する愛情表現でもあったような気がしています。
変な話ですが、僕は妻帯もせず、出世もせず、40歳を超えても手取り年収が片手に届かないような会社員(幹部候補生)でした。
現在67歳ですが、僕の人生の中で、北海道大学卒業という学歴が評価されたのは、この裁判で執行猶予三年が四年になった、ただその時だけでした。


