編集後記
——沈黙の中に置き去りにしてきたものをようやく言葉に——
退職したのは2000年のことである。あれから4半世紀が過ぎた。当時だったら、会社はこういったに違いない。
・メンタル不調の人間は認められない
・だから昇進させない
・だから給与も上げない
・だから現場に回す
・だから会社のせいではない
こうした「常識」と称するものの前では、僕のような者は、声を上げるまでもなく、初めから敗者として扱われる。そのことを悟った瞬間から、僕は長い間、沈黙の側に身を置いてきた。
しかし、年月というものは、時に残酷である。25年という歳月は、僕の背負ってきた苦痛の総量を、ようやく輪郭のあるものとして示すようになった。
あの頃の出来事は、単なる不運でも、不調でもなく、会社というひとつの社会構造が個人を押しつぶす構図だった。
僕は仕事をこなし、成果を上げていた。そのことは猿渡が手紙(「日本エア・リキード残酷物語」参照のこと)に記したとおりである。にもかかわらず、「常識」という一点で切り捨てられた真実は、黙して葬るにはあまりに重い。
だから、敢えて筆をとった。沈黙の中に置き去りにしてきたものを、ようやく言葉に戻す時が来たのだ。
落馬文学 — ある昭和人の転落と再生
(凡題:けしからん会社シリーズ)
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谷町の言葉:
「ここまでくれば、あとはもう、まくりさすしかない!」
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第1部 社会的落馬(会社)
収録作:
◆01. 「日本エア・リキード残酷物語」
→ 身内びいきによる左遷、低賃金と過酷な労働による実質労災
第2部 経済的落馬(収入)
収録作:
◆02. 「自分の金ぐらい自分で稼げ、馬鹿者めが!」
→ もはやこの会社で金を稼ぐことは望めない
第3部 精神的落馬(自尊心)
収録作:
◆03. 「作家脳」
→ 筑波工場での副社長の囁き、助け舟の提案
第4部 肉体的落馬(身体)
収録作:
◆04. 「けしからん会社」
→ けしからん! 左遷、低賃金、実質労災の揃い踏み
第5部 編集後記
収録作:
◆05. 「沈黙の中に置き去りにしてきたものをようやく言葉に」
※シリーズ作品が語る内容は、すでに法的時効を迎えている。しかし、長年僕の心の奥底に沈んでいた、歓迎されざる経験であり、僕自身のトラウマ軽減のためにも、あえてここに公開しておく。


