心の叫び

自分を語るエッセイ
エドヴァルド・ムンク作『叫び』オスロ国立美術館所蔵(Wikipediaより)
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【作品紹介】

散々頑張ったけれど何ひとつ自分の思い通りにはならなかった。結局こんなものだろうと思った。そんな人生の中で、宗教や芸術や文学が唯一の救いであるような気がしていた。最近になって気づいたことがある。そもそも僕は会社員には向いていない。現在はもういい歳となったが前向きに文筆家を目指している。クリエイティブな思考過程が実に楽しいと気が付くのに、随分と時間を浪費してしまった。


北大の同級生が製薬会社の役員になっていて、自分が勤める会社の副社長と仕事の上で友人関係となっていた。一方、自分は平社員に毛が生えた程度の立場で月給も安い。それに、昼間の時間帯はデスクワークより現場で汗を流すことが多かった。お陰でその後、そけいヘルニアと腰痛を患い現在も完治していない。そんな、自虐の極致のような環境に身を置いた時、一体、自分はどうなるのだろうか、という興味はあった。これが、「作家脳」というヤツではないだろうか。作家が持つ特有の心の働きだ。自分にとってどんな不利な事を味わっても「僕は(わたしは)今それを経験したぞ!」と思う気持ちのことである。そんなギリギリの心境を原稿用紙5枚という小宇宙に僕は閉じ込めておきたかった。

小倉 一純