【作品紹介】
高齢の父の介護の現実を綴りました。父は在宅医療のお世話になり愛する我家で亡くなりました。
在宅医療では、ドクターやナースが往診してくれますが、完全看護の病院のように丸ごと任せておくことはできません。家族の献身的な介護・看護が必要不可欠です。
それは、体力と気力の勝負です。排便の処理、つまり汚物を片付け、汚れた部位を清浄し、新しい紙パンツをは穿かせるなどの仕事も、基本的には、家族の分担となってきます。
慣れ親しんだ自宅で人生を終えたいと思うのは誰しも同じです。そのためには、現在の医療制度では、この方法ぐらいしかありまん。
ご家族にも仕事はあるでしょうし、どなたも気力や体力が溢れているわけではありません。より一層の制度の充実が必要であると感じています。
文芸思潮エッセイ賞で入選の作品です。文学賞受賞歴:https://zuishun.net/ichizyunogura/2/#1
🏅「文芸思潮」エッセイ賞で入選
小倉 一純
【父が利用した制度について】
作品紹介で書いた紙パンツの交換ですが、「医療」ではなく「介護」の分野で「ヘルパー」さんを依頼することができます。利用料は、介護保険の持ち点数の中から支払われます。つまり保険が効くということです。持ち点は、要介護の度合い(要介護1~5:数字が大きいほど症状が重い)により決まっています。
ヘルパーさんを信頼し「鍵を預けておく」と、ご家族が寝ている早朝、深夜にもバイクや自転車で通ってくれて、紙パンツの交換をしてくれます。父の場合、同性でしたので、下のお世話はすべて僕が行いました。
なお、要介護1~5の他に、要支援1~2、というものがあります。つまり介護レベルは、要支援1<要支援2<要介護1<要介護2<要介護3<要介護4<要介護5、の7段階に分かれています。
要支援に関しては、公立中学校1つあたりにつき1箇所の割合で設けられた「地域包括支援センター」が事に当たってくれます。地元の民間介護施設などがこの任に当たっています。その際は準公務員という扱いになります。利用者が他の地域包括支援センターを選ぶことはできません。
要介護に関しては、「居宅介護支援センター」が自由契約で事に当たってくれます。地元の民間介護施設などが任に当たっています。その際は民間業者という扱いなので、利用者はその業者と契約を交わす必要があります。ただし利用料金は、要介護度に応じた持ち点数の中から保険で支払われます。
患者さんは、容態が重くなると、要支援から要介護の段階に移行します。その際、「地域包括支援センター」と「居宅介護支援センター」を同じところ(民間介護施設)に継続して依頼することもできますし、別のところと契約することもできます。
我家では「地域包括支援センター」の担当者(女性のケアマネ―ジャーさん)と顔馴染になっていたので、同じところが運営する「居宅介護支援センター」を選びました。
なお、「地域包括支援センター」に選定される業者ですが、我家の地域では、市役所の入札により決定されます。一定の期間で更新もされています。
その他に、要介護の持ち点数の中から、医療用のレンタル用品を利用することができます。
父の場合は、電動リクライニングの介護ベッド、点滴のパックを吊るすスタンド、喀痰の吸引機、車椅子(室内、屋外各1台)などをレンタルしました。
亡くなる間際には、酸素吸引機(PSA)も使いましたが、これは医療機関つまりお世話になっている在宅医療のクリニック(医院)のドクターが手配してくれます。
なお、喀痰の吸引は家族の大切な仕事の一つです。使い方を看護師さんから指導されマスターすることが大切です。もちろんお使いにならない場合もあると思います。
さらに、必要な紙パンツや給水シートなどは、申請をすれば、保険の利く形で支給を受けることもできます。我家の場合は、その手続きが面倒と感じたので、Amazonなどの通販で購入していました。
その他に、食事が上手く摂れなくなってからの「高カロリーゼリー」などの補助食品も必要となる場合もあります。割高な商品ですが、僕の場合は上と同様、Amazonなどの通販で調達していました。
介護に関しては、自衛隊ではありませんが、物資の調達・補給・管理が、ご家族の重要な任務となってきます。
ついでなので書いてしまいます。入浴に関してですが、入浴介護業者というのがあります。湯沸かし器(つまりボイラー)、送水ポンプ、電源なども搭載したワンボックスカーで自宅まで来てくれます。
組み立て式の浴槽を畳2畳分もあれば室内で組み立てることができます。そこに患者を寝かせ、洗髪、体の清掃を行いシャワーで流し、最後にお湯を張って入浴させてくれます。
その間、正味40~45分です。ただし入浴時間、つまり患者さんんがお湯に浸かる時間は、5分程度です。患者さんの身の安全を図ってのことだと思いますが、まだ元気なうちは、患者さんは少々もの足りないようです。
父は首の神経をやられ全身麻痺に近い状態でしたので、早期から入浴介護業者を依頼していました。とはいうものの、父は寝付いてから丸4か月は経過せずに天に召されましたから、長期に渡ってというわけではありませんでした。
小倉 一純
