村山富市元首相と随筆春秋
村山富市元首相が亡くなった※。101歳だった。村山さんは日本社会党から総理大臣になった唯一の人物である。それまで絶対に認めなかった「日米安保条約」も容認し、日本社会党の最期を看取った政治家でもある。
僕は村山さんが仕事の時はいつも大手紳士服量販店(AOKIだったかコナカだったか……)のスーツを着ていると語っていたことが忘れられない。かつての共産党・志位委員長もそうだが、左派系の党首は、自民党の党首とはやはり赴きを異にする。(ちなみに、志位委員長の当時の年収は1千万円を少し超える程度で、千葉県船橋市の公団分譲マンションに住んでいた)
村山さんは、随筆春秋誌の読者だった。大分県の村山邸近くに住む随筆春秋の会員さんが、時々、刷り上がったばかりの随筆春秋誌を届けていたそうである。一会員として池田さん(随筆春秋・代表理事)から話を聞いた。写真も見せてもらった。庭の柿の木が見える窓際の火鉢付き卓袱台の前にのんびり座り、しげしげと覗き込むようにして紙面を眺めている、そんな構図だった。トレードマークの長い眉毛もハッキリと写っていた。
ここからは想像なのだが、村山さんは為政者であったから、市井の生活には関心があったのだろうと思う。同人誌・随筆春秋にはかなり上手な人もいるが、プロの書くエッセイとはやはり違う。レベルが低いというのではない。商流に乗せることに主眼を置いていないから、自分の人生や生活をあのままに描いている。村山さんも、そんなところを評価してくれていたのかもしれない。
合掌、小倉 一純
※朝日新聞 電子版 <村山富市元首相が死去、101歳 自社さ連立政権、村山談話を発表|2025年10月17日 13時26分>
⇒ https://digital.asahi.com/articles/ASTBK168ZTBKUTFK005M.html
