【付録】筆写体験とその意味 / 佐藤愛子・著作一覧

佐藤愛子先生を筆写

1. 筆写体験とその意味

 僕はこれまでに、作家・佐藤愛子の作品を筆写することに4年の歳月をかけて取り組んできました。筆写した作品は以下の通りです。

 ・『晩鐘』(新潮社、2001年)
 ・『血脈(上)』(新潮社、1994年)
 ・『血脈(中)』(新潮社、1994年)
 ・『血脈(下)』(新潮社、1994年)

 この筆写の営みは、単なる模写にとどまらず、文体のリズムや語彙の選択、感情の機微を身体で感じ取り、作家の思考の流れを追体験する知的修練の時間でした。とりわけ『血脈』3部作においては、佐藤家3代にわたる壮絶な家族史と昭和の時代背景が交錯する中で、語り手としての佐藤愛子の視点と筆致の力強さに深く触れることができました。
 興味深いことに、先生ご自身も若き日の修行時代に筆写を重ねたと語っています。師を含む日本人作家数名と、アーネスト・ヘミングウェイの日本語訳作品に取り組んだそうです。
 ヘミングウェイは元新聞記者であり、その文体は一文が短く、無駄を削ぎ落とした確信に満ちた表現が特徴です。佐藤愛子は修行時代、このヘミングウェイの日本語訳作品を筆写し、その簡潔で力強い語り口に触れました。

 もともと率直で芯の強い性格を持つ佐藤愛子にとって、ヘミングウェイの文体は自然に馴染むものだったのではないでしょうか。
 先生は、筆写は1人の作家に偏らず、複数の作家の文体を写すことで、自らの文体が自然と形成されていくと述べています。

 小倉 一純

2. 佐藤愛子・著作一覧

◆上記タイトル資料作成の過程
国立国会図書館サーチ(NDL SEARCH)から、編者・著者「佐藤愛子」で検索をかけ、新しい順に並べたものを(検索過程の詳細は以下資料巻頭に掲載)、
・tsv形式でダウンロードし、エクセルで開く。
・そのエクセル表から、「書名」「出版社」「出版年月」だけを活かし、残りのデータをすべて削除。
・そのエクセルをPDFに変換し、アップロードしたものが以下。


※上記過程を経て、現在、計416件(2025年11月18日現在)。