【作品紹介】
僕は今年の十一月で文筆家を志して丸八年になります。随筆春秋賞に応募したのがきっかけで当時の事務局長であった池田氏に声をかけられメンバーになりました。その時、「まっ、文筆家として一人前になるには、よほど早くて五年、大抵は十年といったところでしょう」とアドバイスされています。最初の五年は無我夢中であっという間に過ぎました。その割には少しも文章が上手くなった気はしませんでした。文才がないからじゃないの? とお思いの向きもあろうかと思いますが、池田さんとても無差別に声をかけている訳ではないと思います。
上記は、そんな僕の文章にまつわる諸々を原稿用紙五枚に書いてみました。
僕なりに最近分かった事といえば、ちょっとしたトピックスやいいなと思った事柄なら四百字詰め原稿用紙で三枚、いい話など物語的エッセイなら五枚、エッセイ賞など腕を見せる作品なら十枚という分量がひとつの目安です。また業界では「原稿用紙五枚の小宇宙」という言葉があります。実は五枚で仕上げた話が一番素晴らしいということです。三枚では足りないし十枚では多過ぎる。でもなぜ五枚か科学的な根拠は僕には分かりません。
——さて、
最近の若い作家に関しては、石田衣良氏のyoutubeの番組をよく視聴しています。僕とほぼ同年代ですが、実に要領よく、正確に、現在の若者事情を語っています。流石、売れっ子直木賞作家の先生なのだと感心させられます。むかし、都立高校では学校群制度が実施されていました。石田氏はその中で一番上の都立高校を卒業しています。でも東大や早慶には進んでいません。受験にはまったく関心がなかったそうです。社会に出てからは、たとえ相手が東大出であっても、絶対に負けない自信があったといいます。子供の頃から記憶力は抜群で一度見れば、週刊テレビガイドなどの番組表はすべて頭に入ってしまったそうです。作家の前はCM制作会社でコピーライターをしていました。そういう意味でも石田氏は業界を俯瞰する見識をお持ちなのだと思います。
小倉 一純
時代遅れ

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