お盆

ブログ・文学世界ドットコム
CG:小倉 一純

お盆

 亡くなった父は、今日もこうして元気です遺影の写真が笑っています。お盆なので、馬、灯明、仏花、供物などをお供えしました。2011年春、葉桜の頃に父は旅立ちました。
 その節は、思った以上に多くの香典などをいただきました。皆様のご厚情に改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。
 父は大正14年生まれ。年齢は昭和の年号と同じでした。終戦の年、昭和20年は20歳の青年です。その頃、父は、恋をしていたかもしれません。それをエッセイに綴り、文学賞に応募しました。賞状をいただけましたら、ご披露いたします。この8年間、僕の中で温めてきた話です。
 それとは別に数年前、ある純文学講座の実習で、父の青春時代を綴ったことがありました。講師は30代と思われる男性で、こんな講評が送られてきました。

「時代考証がおかしい……」
「戦争中なのに、こんなにのんびりしているのは変ですよ」

 その言葉で僕は考えました。多くの若者が、同じような印象を抱いているのかもしれません。
 昭和12年、盧溝橋事件を端緒に日中戦争が勃発し、昭和16年から太平洋戦争が始まりました。その太平洋戦争の期間約4年(昭和16〜20年)のうち、日本国内への本格的な空襲が始まったのは昭和19年の11月からでした。米軍機B29による激しい空襲は終戦直前の約10か月ということになります。
 ふざけるなッ、10か月もだよ——、という当時の人の声が聞こえてきそうです。
 つまり、戦争中であっても、国内にはまだ日常の時間が流れていた時期がありました。東京のような都市部でさえ、のんびりとした午後が、確かに存在していたはずです。
 応募作である父の青春物語は、昭和19年から20年にかけての話で、作品中には空襲の描写もあります。そして、太宰治が登場します。文学界としては新事実かもしれません。僕の父のことは、どんな学者も研究していませんから。
 このところ、夜中になると戦争の記録をNHKが放送していますね。では。


文と写真:小倉 一純