女を見る眼つき

佐藤愛子先生を筆写

女を見る眼つき

 男というものはなぜ、女に対する時だけ、自分に対する想像力が鈍るのであろうか? 自分がどれほどの魅力があり、どの程度、女の中での位置を占めているかについて、なぜ静かに思いをめぐらせようとしないのだろうか? 自分が抱いた欲望のために、自分の鼻がダンゴ鼻であることも、女の一番嫌いなスケベマナコであることも意識の中からかき消えてしまう。頭のてっぺんから足の先までソーセージのように欲望が詰まって何も見えず何も聞こえず、ただただ一心不乱にくどきにくどく。女というものは、その一心不乱の無邪気さ、ひたむきさ、そのあわれについ心を動かしてしまうのだ。
 ——私の中の男たち——

◆佐藤愛子『人生・男・女 ―愛子のつぶやき370―』(文化出版局、昭和59年11月)より筆写