クリエイティブ系
心密かにクリエイティブ系の仕事には憧れを持っていたとのだと今になって僕は思う。子供の頃からだ。当時は恥ずかしくてそれを口に出すことができなかった。恥ずかしいというよりも、当事者感がないというか、それは僕の口にすべきことではないだろうと変な確信を持っていた。中学時代、毎朝早く登校し、美術室の資料庫から、神話をモチーフにして多数の裸婦が描かれた絵画のレプリカを持ち出しては、飽かず眺めていた時期があった。美術担当の初老の教師が何度か覗きに来て、「君はこういうものが好きか!」と独り言のようにつぶやいていたのを思い出す。最近、気が付いたことがある。クリエイティブ系の人間というのは、同じ対象を何度も繰り返し観察する癖がある。僕は今(いい歳をして)、文筆家となるべく修行しているが、自分の綴った拙い文章を、時間の許す限り、繰り返し、飽かず眺める習慣がある。そうやって細部を何度も繰り返し観察しているうちに、知らぬまに技能が身に付くのではないだろうか。理論や原理もあるが、最後は体で覚えるものだろう。変な話であるが、川端康成は無類の美女好きで有名だった。大作家となってからは、京都の花街に通い、芸妓や舞妓を茶屋に呼んでは整列させ、息のかかる距離からその顔を飽かず眺めたという逸話が残っている。初心な子など泣き出してしまうこともあったそうである。今の時節に合わない話だが、クリエイティブ系の本性を紹介するには好適だろうと思い、書いてみた。
文とCG:小倉 一純