【作品紹介】
武者小路実篤といえば、まず最初に手に取ったのは『友情』である。恋愛小説である。出世前の小説家・野島が、杉子という若い女性に恋をする。それを応援する友人の大宮。大宮は、野島より少し年上で、すでに文壇では名前が通っていた。やがて、その大宮が、杉子との結婚を発表する……。男の友情をとるのか、それとも恋愛なのか。野島の嘆きと、彼がリベンジを誓うところで幕は閉じる。
武者小路が30代の時の作品だ。だが、後年50代になった武者小路に、あるインタビュアーがこの小説のことを尋ねると、あまり記憶に残っていない、という。「おいおい勘弁してくれよ」と思った。こっちは『友情』を青春の金字塔として心に刻んでいるのだからね……。
武者小路実篤『友情』は、NHKの銀河テレビ小説でも放送された(複数話)。寺尾聡が、主人公・野島を演じ、今は亡き岡江久美子が杉子役を好演した。線の少し細い、青白きにインテリ役に、寺尾がピッタリとはまっていた。忘れることのできないドラマである。
埼玉県毛呂山町に「新しき村」はある。ついこの間まで7~8人はいた村民(全員が高齢者)が今は3人になったという。存亡の危機を救う救世主として、武者小路実篤の実孫の名前が挙っている。
※「新しき村」公式HP → http://www.atarashiki-mura.or.jp/history/index.html
2025.5.6
小倉 一純
バカはバカのまま

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